僕とロルフさんが魔法のお話をしてたらね、ノックの音がして冒険者ギルドの制服を着た人が入ってきたんだ。
「錬金術のギルドマスターがお見えになりました」
「皆さん、お待たせしてすみません」
でね、その後ろからバーリマンさんが遅くなってごめんねって言いながら入ってきたんだよ。
「あっ、バーリマンさんだ。こんにちわ!」
「はい、こんにちは」
ロルフさんは僕がいるのを見てびっくりしてたけど、バーリマンさんはギルドの人に聞いてたみたい。
だからごこんにちわって言うと、にっこり笑ってこんにちはって返してくれたんだ。
「して、用事は済んだのかな?」
「はい、先方には手紙を託しましたから」
バーリマンさんは、錬金術ギルドのお仕事で来るのが遅くなってたでしょ?
ロルフさんはその事を言ってるみたいだけど、バーリマンさんのお返事を聞いてもそれが何のご用事だったか解んなかったんだよね。
だから僕、何のお仕事をしてたのかを聞く事にしたんだ。
「バーリマンさん。錬金術ギルドのお仕事って何だったの?」
「商業ギルドからの要望で、帝都の錬金術ギルドにお手紙を書いていたのよ」
僕が登録した簡易冷蔵庫やクーラーの魔道具って、作るのに氷の魔石がいるでしょ?
でもこのイーノックカウには氷の魔石を作れる人があんまりいないんだって。
だから近くの街の商業ギルドから買ってたらしいんだけど、でもそこでもこの二つを作り始めちゃったもんだからあんまり買えなくなっちゃったそうなんだよね。
そうなるとイーノックカウの魔道具職人さんたちは、魔道具が作れなくなって困っちゃうでしょ?
そんな訳でバーリマンさんは、魔石を売りに来る魔法使い団たちだけじゃなく錬金術師さんたちにも氷の魔石を作って売って欲しいって言うお手紙を書いてって商業ギルドの人たちから頼まれたんだってさ。
「特にクーラーは需要に対してクールの魔法を魔石に刻める魔法使いがあまりに足らないから、ルディーン君が教えてくれた氷の魔石を使って板を冷やす簡易版も作るようになったらしくてね。そのせいでより氷の魔石が足らなくなっているそうなのよ」
バーリマンさんに教えてもらったんだけど、クールの魔法は僕が教えてあげるまでイーノックカウの魔法使いさんたちはだぁれも知らなかったそうなんだよ。
そのせいでちゃんと発音して魔法が発動できる人がまだほとんどいなかったもんだから、最初はクーラーの魔道具をあんまり作れなくって氷の魔石が少なくっても大丈夫だったみたいなんだよね。
だけどクーラーが欲しいって言う人が思ってたのよりすっごく多かったもんだから、商業ギルドの人たちはすっごく困っちゃってバーリマンさんに何とかならない? って聞きに来たそうなんだ。
だからそれを聞いたバーリマンさんは、それならいいのがあるよって僕が最初に作った魔法陣がいらない銅版をつべたくしてお部屋を冷やす方のクーラーの作り方も教えてあげたんだらしいんだけど。
「でもそのせいでクーラーの魔道具を作れる人が増え、生産量が劇的に増えててしまったものだから氷の魔石が全然足らなくなってしまったそうなのよ」
「そっか。だから魔法使いさんだけじゃなくって、錬金術師さんにも氷の魔石を作ってもらってるんだね」
「ええ、そうなのよ。ああ、そう言えば伯爵。この件はルディーン君に伝えていましたっけ?」
「この件? おお、そう言えば伝え忘れておったかもしれぬのぉ」
魔石のお話をしてたらね、なんか知らないけどロルフさんたちが僕になんかお話するのを忘れてたって言い出したんだよね。
だから何の事? って聞いてみたんだけど、そしたらクールの魔法の事だよって。
「ほれ、クールの魔法は君が教えてくれるまではわしらも知らなかったであろう? そこで改めて調べさせたところ、どうやら知らなかったのはわしらだけではなかったそうなのじゃ」
クーラーを作るってお話が出た時にね、ロルフさんたちから魔道具を作ってる魔法使いさんたちにもクールの魔法を教えていい? って聞かれてたんだよね。
だから僕、いいよって答えたんだけど、その時にもしかしてこれは初めて見つかった魔法かもしれないからってロルフさんたちが魔法の本を出してるとこに聞いてみたそうなんだよ。
そしたらさ、クールがほんとに今までに見つかってない魔法だった事が解ったんだって。
「そんなわけで、クールの魔法は未発見の魔法という事で魔術大全に載る事になったのよ」
だから魔法の全部が載ってる魔術大全ってのにのせる事になったんだよってばーりまんさんが教えてくれたんだけど、
「魔術大全!? そんな話、冒険者ギルドは聞いてませんよ」
そしたらそれを聞いたルルモアさんがすっごくびっくりしたお顔で聞いてませんよ? って言ったんだよ。
でもね、そんなルルモアさんにバーリマンさんは、当たり前でしょって。
「クールは狩りや素材採取には関係のない魔法ですからね。窯業ギルドから報告が行かなくても不思議ではないでしょう?」
「それはそうですけど、掲載する事により発生するお金の事もありますし」
「ああ、それに関しては錬金術ギルドにもルディーン君の口座を作って、そこに入れてもらう事になっておりますわ」
「うむ。ルディーン君の親であるカールフェルトさんには手紙でそう知らせてあるはずじゃな」
バーリマンさんたちのお話を聞いて、ルルモアさんと冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターはびっくり。
でもね、それにはちゃんとした理由があったんだって。
「初めは商業ギルドの預金に入るはずだったのですが、ルディーン君がニコラさんたちを預かる事になりましたでしょう?」
「うむ。その時に買った家の維持やニコラ嬢たちの管理をわしが引き受ける事になっておるからのぉ。それにかかる費用を商業ギルドからいちいち引き出すより、常日頃から入り浸っておる錬金術ギルドに口座を設けてそちらから出す方が楽ではないかという話になってな」
ニコラさんたちがご飯を食べたりするお金は、全部僕が出す事になってるでしょ。
それに買ったお家には明かりをつけたりお料理なんかをする魔道具がいっぱいあるから、それを使うための魔道リキッドとかを買わないとダメだもん。
でも僕は普段グランリルの村に住んでるから、自分でお金を出しに行く事ができないよね。
だからそれを全部、ロルフさんにやってもらう事になってるんだ。
「なるほど、だからこその錬金術ギルドでの口座開設ですか」
「ええ。新たな収入が無買ったり、商業ギルドがらみの収益金をわざわざこちらに移すというのなら話は別ですが」
「この魔法の登録手続きはわしが行ったからのぉ。商業ギルドも何も言えんかったようじゃ」
ただ、お金の事だからロルフさんたちだけで決めちゃうなんて事できないでしょ?
だからお手紙を出してお父さんたちにこうするねって教えてあったんだって。
「ただ、親御さんへの連絡を済ませた事に安心してしまって、ルディーン君にこの話をするのをうっかり忘れてしまって」
「それに、錬金術ギルドへの入会もしてもらうつもりであったのに、それすら忘れておってのぉ」
別に錬金術ギルドに入んなくっても今までと変わんないんだけど、せっかく口座まで作ったんだから入ってもらおうねってロルフさんたちはお話してたんだって。
でもクールのお話をする事を忘れてたもんだから、そのお話も一緒に忘れてたそうなんだよ。
「と言う訳で、ルディーン君。錬金術ギルドに入ってもらえないかしら?」
「うん、いいよ! だって僕、お薬とかいっぱい作ってるもん」
僕、お肌つるつるポーションや髪の毛つやつやポーションを村でいっぱい作ってるでしょ?
それにロルフさんやバーリマンさんには、魔道具の事とかを一杯教えてもらってるもん。
だから錬金術ギルドに入ってって言われた僕は、おっきく頷きながら元気よくいいよって答えたんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
実はこの話、急遽差し込むことになった物なんですよ。
というのも現在のエピソードを書くにあたって過去の話を読み返したところ、クールが未発見の魔法だと今更ながらに気が付いたから。
これがロルフさんたちだけにとどまる話なら、別にこんな話を無理やり裂きこむ必要は無いんですよね。
でもこのクールはクーラーを作るために必要な魔法なので、当然広く知られる事になります。
ですから今までの発見同様、何かしらのアクションが無いとおかしいので急遽この話が出来上がりました。
何分このような経緯で生まれた話なので、時系列的におかしな所が出てくるかもしれません。
なのでもしそれに気が付いた方は、申し訳ありませんが感想などで教えてもらえるとありがたいです。